「ハハハハハ!最っっっ高だ!!!!滝のようにとどまることを知らない豪華な食事!ファミコンから最新の音ゲーまで揃った無尽蔵なゲームルーム!そして何と言っても巨乳美人に囲まれるハーレムな生活!!まるで金持ちじゃんか!幸せだ!!」
明屋澄夫(ハルヤ・スミオ)は京都の某大学の新入生。新入生特有の意識の高さでNPO系サークルに入り授業も初回はきちんと出席していたが、ゴールデンウィーク直前にもなると、病気から開放されたのか徐々に飽きが出始めた。このままではダメだとはスミオ自身も思っていたが、5月に突入した途端現実逃避に走っていた。冒頭のセリフはそのめでたくも悲惨な状況を物語っている。なおスミオは普段はおとなしく、集団生活においてはこんな口調になるはずもないような人物である。
「はぁこの最高の気分で一生を過ごしたいぜ・・・ん?」
しかしそんな過剰な平和が安定して長続きするわけもない。目の前には妄想の範疇外の少女がぺたりと座っていた。見た目同い年かちょっと下くらいだ。
「あんた誰?」
「・・・」
少女はきょとんとして首を傾げる。
「俺の幸せな世界に俺の知らない人がいるなんておかしいぞ・・・単純に俺がこの娘のことを忘れているだけかもしれないけど・・・なぁあんた誰なんだ?」
何度問い詰めても首を傾げ、口の前で人差し指をクロスさせる。どうやらしゃべることができないらしい。
「喋れないのか・・・ん?その紙見せて」
ふと少女の足下に四つ折りにされた紙切れを見つけ、それを開いてみた。
【記憶を取り戻し、天使を救え】
「お前・・・もしかして天使?」
少女はこくりと頷いた。
すると突然、スミオの視界がブラックアウトしていった。
「・・・!」
気づくとそこは三重にある自分の実家だった。どうやら今は日付が変わって5月6日、深夜の2時をまわったところらしい。
「記憶、か・・・きっと僕は何か忘れてるんだ・・・あっあそこならきっと何か分かるはず!」
スミオはタイムカプセルを埋めた小学校に向かった。
深夜の電灯の光が照らすところに埋めたのを覚えている。
そこを掘ると、「はるやすみお」と貼ってあるガムテープに書かれた缶箱が出てきた。
「ここに、なにか忘れているものがある・・・」
ぱかりと蓋を開けると、そこには昔遊び倒した遊戯王カード(※)の束と一枚の写真、それと腐ったクッキーが出てきた。うわ、ばっちぃとクッキーを捨て、写真を見ると、そこには幼馴染と写っている自分を含めた5人がいた。
「・・・この女の子誰?」
幼馴染で写った写真のはずなのに、一人知らない女子が紛れていた。
疑問に思いつつも、遊戯王カードを一枚ずつ見ながら懐かしんでいると、見覚えのないカードがいくつも出てきた。
「ここに行け、ってか?」
カードの背に「指定された場所を目指せ」と書いてある。